評論「21世紀祝祭の幕開け」島田誠

21世紀祝祭の幕開け
栃原敏子展によせて
ギャラリー島田
島田 誠
2001/1
  栃原敏子は稀なるスケールの大きな画家である。震災に誘発され、社会の矛盾に怒り、人間の醜さと優しさの狭間で引き裂かれる自我を抱えながら思いは国境を超え、地球をすら超えようとする。その都度に主題はピエロであったり、より抽象化されたものであったりするが、どの絵も懸念の檻を打ち破る、幸・不幸を超越した人間の本質的な輝きを提示してみせる。それは才能としか呼びようのない栃原独自のものが何を描いても噴出するという趣きなのだ。簡単に言ってしまえば「元気が出る絵」「幸せになる絵」なのだが、その先の「命の形」までを感じさせることができる画家は希有なのである。
1997年からニューヨークで発表をはじめ。今やNYの方が拠点となりそうな勢いである。彼女の思いや、行動が国境を超えて行くのではなく、作品が、表現が国境を超えていくのである。
新しい年の最初の展覧会を「栃原敏子展」に託するのは、絶望的で瀕死の状況に見える未来を「捨てたものでない人間の本質を根底にして、精神の豊かさを加味した」ナイーブでパッションの溢れた栃原さんの絵で「21世紀の祝祭の幕開け」を飾りたいとの思いからである。
多くの方々のご来場をお待ちいたしています。
会期 2001.1.5〜1.15